相変わらず寂れた商店街だが、今日はそれにもまして人がいない。
甘い苺売ってるといいな。
苺ジャムを作ることが脳内の9割をしめていたとき、その声が聞こえた。
『気をつけて!』
空耳…?
『気をつけて!鈴音!』
違う…空耳じゃない。
だけど…今のは本当に耳から聞こえた声なの…?
違和感がある声だ。
まるで…
「脳内に直接話しかけられているみたい…。」
『鈴音!後ろ!』
「え…?」
条件反射で後ろを向く。
すると…
「キャーーーーーーーーーーーーーー!」
鈴音の背後には日本刀を振り上げた黒ずくめの男が立っていた。
「チッ気づかれたか。」
男は振り上げた刀を構えなおす。
「な、何…?誰なの…?」
『落ち着いて、鈴音。』
この状況で落ち着いていられるか。
私は…
殺されかけているんだ。
「せっかく気がつかないうちに死なせてやろうと思ったのによ。今日会った人間の中でもお前は最高に運が悪い。」
男、というより少年のような声で黒ずくめの男が話す。
「あなた何よ、なんで私を殺そうとするのよ!」
「見た目に反して気が強い女だな。」
「うるさいっ!」
「おうおう。まあ教えてやる義理はねえがいいか。そこの横の路地見てみろよ。」
鈴音は少年に警戒しながら路地をみる。
「っ!!!」
路地には何人もの人が惨殺されたあとが…何体もの死体が転がっていた。
「あなたがやったの…?」
「この状況で俺以外にだれがやるんだ?」
確かにその通りだ。
「つまり、私もあの中の1人になるってことね。」
「そういうこと。」
こいつは、無差別殺人犯か何かってことか。
私に恨みがあるわけじゃない。
だったら、殺される義理はない、逃げよう。
『ダメ、ダメだよ鈴音!逃げちゃダメ!逃げたらこいつは即刻貴方を切る!』
……。
いったいこの声は何なんだ、そう考えるのもいいかもしれないがそんな暇はない。
とりあえず、この声が信用できることは確かだ。
「ふーん、逃げないの?」
「逃げたら私を切るんでしょ!!?」
「よくわかったな。」
これでさらに声を信用する確証がうまれた。
(ねえ、私はどうやったらこの場から生きて帰れる?ここは私が死ぬ場所じゃない。)
『…逃げれる確立は0.01%。戦って生き残る可能性は50%。他に生き残る可能性が少しでもあるものは…ない。』
(……。戦う?戦ってこいつに勝つ可能性があるの!?)
『勝つ可能性は極めて少ない。だけど生き残る可能性は50%。』
(…戦う。私はここで死ぬわけにはいかないの…。)
『なら汝に力を貸しましょう。』
(…ありがとう。)
「黙りこくってどうした?もう怖くて声もでないか?」
少年が刀を抜こうとする。
『さあ、我を呼ぶがいい。汝の声にこたえましょう。』
頭に言葉が浮かんでくる。
「我の声に答えよ!神器紅姫(じんぎべにひめ)!」
鈴音の声とともに赤色の強い光が辺りを照らす。
光が一点、鈴音の手元に集まり日本刀を象(かたど)った。
鈴音の腕がその日本刀を1回振る。
そこからおきた風に吹かれ、鈴音の頭から黒髪のウィッグが落ちた。
ウィッグが落ちると、鮮やかな紅色の長い髪が風になびかされながら現れた。
そして邪魔だと言わんばかりに鈴音は眼鏡をはずす。
眼鏡の下から現れた目は大きく、瞳の色も髪とおなじく紅色。
“美人”なんて言葉では表せないほど美しい姿へと変わった。
これが“九条鈴音”の本当の姿だ。
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